見えない花
見えない花
神の目にも入らない 小さな小さな少年は
人を恐れ口を閉ざし 影を歩いていた
自分を捨てた手のひらを 恨めずにいた少年は
暗くてもいい寒くてもいい 帰る場所を探してた

けれど誰の顔も思い出せず 話しかける相手も見つからず
世界に憎しみをぶつけるように 少年は武器を手にした

すぐ側にある光が眩しすぎて 少年は隠れた 
見える花に手を伸ばしたら その手はするりとすり抜けた
「声を聞いて」「名前を呼んで」 声なき声で叫んでみたが
誰も耳を傾けずに 見える花を踏みつけて行った

だからもう手遅れだと呟き 在ったかもしれぬ未来を呪い
孤独に震えて心は壊れ 少年は引き金を引いた

どこまで行けば逃げられる 雪の中自転車をこいだ
終わりのない闇を往く 未だ見ぬ故郷を求め
どこまでもどこまでも 少年は自転車をこいだ
神だけが知っていた 逃げきれないことを

許されることのない少年を 人は探し求めた
気が付いたら捕らえられ やっと人の目にとまった
壁の中悔いるだけの日々に 差し伸べる手は多く
矛盾の糸に巻かれながら 少年は本当の愛を知る

「ありがとう」と口にする度に 自分の心の弱さを責めた
できるならばあの日に帰りたい 少年は涙を流した

生きたいと願った肉体は その死でしか罪を贖えず
終わりのない闇が来る もう朝は来ない
悲劇が繰り返さぬようにと それだけを心から願い
赦されることを望まずに 少年は旅立った
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